ユリノキ VS エゴノキ VS トチノキ

ミツバチの蜜源樹についてもう少し書きたいと思います。
ユリノキについて本一冊を使って解説した書籍があります。
「ユリノキという木─ 魅せられた樹の博物誌」というタイトルでアボック社出版局というところから出されているものです。

その中に面白い記述があるので紹介したいと思います。
もともとは農林水産省畜産試験場の室長であった中野茂さんという人が多くの花について、その開花中の産蜜量を調査した結果を元に書かれてあります。その資料は畜試年報の1972年のどこかに載せられているというところまではわかったのですが、ネット上では見つけることができませんでした。畜産試験場に聞いてみたら資料が残っているかもしれません。

その中では多蜜な植物としてエゴノキがあげられています。

DSC02753.jpg
                  (これは以前育てていたピンクのエゴノキです)


エゴノキは、英名スノーベル( Snow bell )と呼ばれ、その名のとおり、純白で玉のような小さい花がいくつも集まって、あたかもシャンデリアのように垂れさがって咲く。まことに可憐で美しい花木なので、庭にぜひ一本は植えてほしい低木である。

このエゴノキの花の分泌する蜜量は多く、一花で〇・九五ミリグラムになる。これに次ぐ花木といえば、たとえばサクランボ、つまり桜桃ともいわれるセイヨウミザクラで、約半分の〇・四七ミリグラム、ウワミズザクラが〇・三八ミリグラムとつづく。そして、東海以西や四国・九州で生け垣に用いられており、橙色の小さな実をつけるカナメモチは○・○九ミリグラムという少ない蜜量である。

しかし、一花の蜜量は、必ずしも蜜源としての価値を決めるものではない。むしろ着花数との相乗値で評価されなければならない。 中野氏は、蜜源樹として最近脚光を浴びている、一般にビービーツリーと呼ばれているチョウセンゴシュユ( Evodia daniellii Hemsley )の花蜜について、一花の蜜量が雄花で〇・一一ミリグラム、雌花で〇・二五ミリグラムと測定した。

数字が示すごとく、この木は一花の開花期間中の全蜜量がごくわずかではあるけれども、一木につける花数が非常に多く、満開時には、自分の花で自分の葉を覆いつくすほどなので、にわかに蜜源樹としてAクラスに位置づけされたのである。



エゴノキは一つの花で0.95mgの蜜を分泌するそうです。
サクランボが0.4mg、ウワミズザクラが0.38mg、カナメモチが0.09mgだそうです。
イヌゴシュユは雄花で0.11mg、雌花で0.25mgとなっています。
そして一花あたりの蜜量×花数でどれほどの蜜源になるかが決まります。
なるほど!その通りですね。一花あたりの蜜量が少なくても花が沢山あれば増えますね。

さてここでユリノキが登場します。

これも中野氏の調査結果だが、ユリノキの一つの花の分泌期間である四日間に、最高二二六・五ミリグラム、最低三五・五ミリグラムを測定している。そして、「花の中をのぞいたところ、花底にある蜜槽からあふれた小さく丸い蜜のかたまりが、ポツポツと列をつくって並び、花弁の根元に付着しているのを観察した」と述べている。
さらに氏は、「研究室で調査したもののうちでは、ユリノキは蜜の分泌量が最高の花であった」とも付記されていた。



ユリノキはなんと一つの花で最高226.5mgの蜜を出したそうです。
エゴノキの花の238個分です。イヌゴシュユの雄花と比較するな2,059個分になります。
ユリノキの花は確かに大きいですが、それにしてもこの蜜の量の差はすごいです。

他にも次のような説明があります。

蜜蜂たちが好んで集まるユリノキの花の中には、まるで小さい水滴のようになって溜っている花蜜を見ることができる。一匹の蜜蜂は、一つの花で自分の蜜嚢を満たすのに十分すぎるほどだ。

ユリノキが二〇年生ほどになると、一本の産蜜量は三・九キログラムに達し、その半分に近い一・七キログラムを蜜蜂によって集めることができるという。


ユリノキの本なので、ユリノキがいかに優れているかが説明されているのですが、それにしても、蜜源樹として優れいていることがわかります。蜂蜜の質も高く、またミツバチにとってもお腹をこわすことがない蜜であると説明されたいました。


沢山の蜜を出すということではトチノキもあります。
トチノキが1本あれば、セイヨウミツバチを2箱養うことができるというのをどこかで読んだことがあります。
また「トチノキはシナノキとともにわが国山の蜜源の王座を占める。雨量が多く、気温の高いことが流蜜を多くし、条件さえよければ1群30kgにおよぶことがある」。と紹介しているものもあります。

ただトチノキの難点は成長が遅く花が咲くまでに30年かかることです。私も庭にトチノキを植えて20年経ちますが、まだ花は咲きそうにありません。あとまだ10年もかかります。
こうなると自分の代ではハチミツを取れない可能性があります。子どもがミツバチを飼うなら子どもたちのためにトチノキを植えることになります。


さてさて、とりとめもなく書いてしまいましたが、今日出てきた樹種の名前を挙げておくと、
①エゴノキ
②セイヨウミザクラ(さくらんぼ)
③ウワミズザクラ
④カナメモチ
⑤イヌゴシュユ(ビービーツリー)
⑥ユリノキ
⑦トチノキ
などがありました。これらは主要な蜜源になる樹です。
もちろん主要蜜源があれば良いということではなく、様々な樹から蜜や花粉を集めることでミツバチは元気になります。
アメリカではアーモンドの畑が広大に広がっていて、そこに置かれているミツバチは栄養が偏ってしまうそうです。
やはり、蜜や花粉をだす色々な樹を植えてあげることが大切ですね。

DSC08688.jpg

上の写真はウワミズザクラです。この下を歩くとミツバチの羽音でこの樹の存在に気がつきます。

2019/5/9 ウワミズザクラ


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Comments 8

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カピバラ

流蜜の多い樹

みつばちさん
日本みつばちを飼う上で、蜜を多く出す樹が分かりました。(^^)
でも、日本みつばちの集める蜜は、特に百花蜜と言われるように、色々な蜜のブレンドであり、それで蜜の偏りを修正しているのかなと感じました。
ただ、あげて頂いた樹はいずれも大樹であり、植える場所も必要ですし、時間もかかります。
ユリノキやビービーツリーを植えようかなと考えた事がありますが、たぶん私はそれらの花を見る事はできないでしょう。
みつばちさんのあげて頂いた中に、ウワミズザクラが唯一確認できています。
春になったら、ウワミズザクラの花に我が娘が来ているか、よく観察したいと思います。

  • 2020/01/08 (Wed) 05:43
  • REPLY
みつばち
みつばち

To カピバラさん

いつも訪問&コメントありがとうございます。
ビービーツリーは4年くらいで開花しますよ。エゴノキも4,5年で花が咲いたような気がします。トウネズミモチやネズミモチも早くに花がつきます。
トチノキがちょっと別格なのかも知れません。

hakoron

こんにちは。
密が多い樹という観点からの記事、面白く楽しかったです。
我が家の庭には、エゴノキが植えてありますが、目的は、ヤマガラの飛来です。
庭のあちこちに、芽を出していつのまにか花をつけています。植えたのは1本だけど、現在は大小4本。今年は蜜を集めに来る、ミツバチも待ってみることにします。

  • 2020/01/08 (Wed) 16:14
  • REPLY
さえき奎(けい)

何気なく「花の蜜」などという言葉を使っていましたが、大変勉強になりました。

トチといえば、昔トチの実の団子作りに挑戦して失敗したことを思い出します。
水に浸けておいて交換するだけでは上手くアクが抜けず、とても食べられません
でした(笑)。やはり家の裏に小川などがある環境で、流水に晒しておくことに
よって成立するメニューなんだということを痛感したものです。
応援ぽちさせていただきました。

みつばち
みつばち

To hakoronさん

訪問&コメントありがとうございます。
エゴノキの実生いいですね。
ヤマガラが来てくれるといいですね。

みつばち
みつばち

To さえき奎(けい)

トチノキは水に漬けておくとものすごい灰汁が出ますね。
流水にさらすのですね。勉強になりました。

初めてコメントさせていただきます。
巨樹をふらふらと撮って歩いている者ですが、トチの巨樹はたいてい険しい山中にあり、手強さも見た時の感動も大きく、大好きな樹種です。
昨年の初夏に四国山中で大きなトチを撮影した際、どうも妙な匂いがするなあ……と仰ぎ見ると、すごい数の花が咲いており、落花が雨粒のように落ちてきていました。
蜜の分泌量がそんなに多く、開花までにそこまで時間がかかるとは、こちらの記事で初めて知り、大変驚きました。
実以外でも本当に恵みの多い樹なのですね。
大きな天然のものは数を減らしているでしょうし、ぜひ大切にしていきたいと思いました。

みつばち
みつばち

To 狛さん

訪問&コメントありがとうございます。
巨樹めぐりいいですね。うらやましいです。わたしはもっぱら山梨県内の巨樹を見て歩いてます。ちなみに山梨県は、国の特別天然記念物で単木の樹木に限定すると日本で3番目に多い都道府県だそうです。

  • 2020/01/10 (Fri) 22:40
  • REPLY